iPhoneアプリ作成までの道のり13

13. あとがき

これまで全12回に渡って、新入社員がiPhoneアプリ開発に携わることができるようになるまでのロードマップを示した。書き始める前には、最低限覚えなければならないことなんて、10章もないな、と思っていたが、いざ考えてみるとあれもこれもと出てきてしまって、やはりiPhoneアプリ開発の敷居もそれほど低くはないと感じた。

最後に1つだけ注意点を。

GUIアプリの開発は、Web系の開発と比べると、マルチスレッドプログラミングの必要性が高いという特徴がある。通信や時間のかかる演算をしている最中に、画面のユーザー応答を止めるわけにはいかないからである。私は、本当はプログラムの初心者にマルチスレッドをやらせるべきではないと思っている。もし、他の言語でのマルチスレッドプログラミングの経験があるならば、iOSでは高度なマルチスレッド技術をサポートしているので安心だ。もし、マルチスレッドプログラミングは全く経験がないけど、どうしても最初(あるいは2番目)のアプリでマルチスレッドにしないといけない、という状況になってしまったならば、まずはアプリ本体を作るのとは別に、マルチスレッドの比較的簡単な題材にチャレンジして、いくつかテストプログラムを作ってみることをお勧めする。それが動いたら、慎重にテストしながら、自分のアプリに組み込んで行くのだ。1つアドバイスできることとして、「GUIを操作するのはメインスレッドだけ」という大原則を最初に理解しておいて頂きたい。それだけじゃだめで、処理を同期したり、データをアトミックにしたりとかは、まあ・・・なんだ・・・頑張ってくれ。

さて、後書きもまた長くなってしまった。

iOSのマスターを目指すというならば、私がこれまで書いたことだけでは、まだ足りないくらいではある。けれども、ここまでのことをすべて理解できたならば、既に初心者のレベルではないはずだ。必要な情報を自分で収集しながら、アプリを開発することは十分叶うだろう。つまり、この連載の本題に対して言うならば、まさしく「卒業」だ。おめでとう。

この先、何をすれば良いのかというと、もし500ページくらいの内容の濃い本をゆっくり読む時間と、4,000円くらいの出費が許されるならば、詳解Objective-Cをお勧めする。

詳解 Objective-C 2.0 第3版

詳解 Objective-C 2.0 第3版

私がここに書いてきたことの復習になった上で、より詳しく、より広く、iOSの技術を学ぶことができるはずだ。この本すら読み終えたなら、その時点でもう中級者以上だ。そこから先は、たくさんアプリを作ると良い。Appleの公式サイトでドキュメントを漁ると良い。何本もアプリを作って、まだ日本語で公開されていないドキュメントを貪るようになったら、もう紛れもない、上級者だ。その時あなたがしなければならないことは、「私にObjective-CiPhoneアプリ開発の技術を教えること」である。これは必ず実行しなければならない。