6年ぶり2回目
多分すぐに変えるだろうけど、今、私のはてなのプロフィールのショートコメントのところには「6年ぶり2回目」と書いてある。
1ヶ月くらい前からそう書いているんだけれども、誰からも「え?なになに。何が2回目なの?ゴールデングラブ賞でも取ったの?」という問い合わせが一向に来ないので自ら自分語りというやつをすることにした。
はじめに断っておくが、私はいわゆる下ネタというやつが好きなわけでも嫌いなわけでもない。
私は面白いことを書こうとしても書ける人間ではないし、少なくとも今は面白い話をしようとはしていない。
1か月前にあった事を、ただ書く。
これはただの話だ。ただの物語だ。(あららぎこよみ風味)
-
-
-
- -
-
-
あなたは魂という概念をどう捉えているだろうか。
私はそれに対して、精神力と運命力を合わせたようなイメージを持っている。
私の会社の上司と社長は、きっとギルガメッシュほどじゃないにしろ、世間一般で言えば、相当強い魂を持っていると私は信じている。
彼らはいつも、ここぞという時に負けない。
彼らはいつも、最悪の状況をギリギリで避けられる。
彼らはいつも、最終的な判断を誤らない。
多分、私も。
-
-
-
- -
-
-
あれは11/12の土曜の昼のことであった。
私は今は父と一緒に実家暮らしをしている。
私は毎週土曜日は休みで、父はいつも土曜は仕事に出ていて、家にはいない。
休日に1人で家に居るというのは、私の中の小さな幸せの1つであった。
だが、この日は父はたまたま休みで、家にいたのだ。
そう、この日父は、朝は家にいたのだ。
私は土曜の昼は外食を楽しみにしている。これも私の小さな幸せの1つ。
特にオキニなのがニュータンタンである。
このニュータンタンという食い物は、ああ、そう、これは一応、劇薬の類ではなく、私の地元のソウルフードである。
こんなやつ。
おそらく、担々麺を元にしているのだと思われるが、見ての通り、これは全く持って担々麺とは異なるものである。
中には大量のニンニクが入っている。
そして辛い。そしてそしてウマイ。
ごま風味の味は一切せず、ただただ辛くてニンニクで、大量のひき肉と卵が入っている。
スープの味つけは調理酒と魔法の白い粉だが、どんな味かと聞かれれば基本的に唐辛子とニンニクの味である。
一応、麺も入っているので、かろうじてラーメンの体裁は保っている。
まあ、とにかくすごい味だ。最近の松本人志なら必ず「えっぐいわぁ」というに違いない。
素人にはオススメできないが、これがまた病みつきになるのだ。私は学生の頃からずっとこのタンタンを愛している。
ただ、こいつを昼に食べたなら、翌日の夜まではニンニク臭が消えないほど、やはり強烈なのは確か。
だから私は、いくらこいつのことが好きでも平日に食すことができない。
その反動からか、土曜日には無性に食いたくなるのだ。
そんなこんなで、この日も私はニュータンタンを食べることにした。
昼、家を出るとき、朝はリビングに居たはずの父はそこにおらず、おそらく外出していたのだろう。
まあ、何も不思議なことはない。
良い天気だ。
私は鍵を閉めて、家を出た。
10分歩いて、店の前に並んだ。
ニュータンタンは人気店だし、皆同じ理由で特に休みの前の日に混むのである。
まあその辺は慣れている。
iPhoneで遊びながら入店を待った。
タンタン麺、中辛、大盛り、具ダブルを注文した。
しばし待ち、食った。
腹一杯になった。
汗だくになった。
美味かった。
そして腹が痛くなった。
当たり前だ!
こんなクレイジーな食べ物を体内に入れて腹を壊さないわけがない。
当然、店内のトイレはいつも空いていない。ずっと誰かが入ってる。今も誰かが入ってる。みんなみんな腹が痛いのだ。
ここはもうだめだ。私は持ち前の判断力で、さっさと会計を済ませて店を出た。
早く帰らないとまずい。私は肛門に力を込めながら歩き続けた。
ニュータンタンは悪くない。私は彼との付き合いが長くて、慣れているからいつもは大丈夫なのに、今日はたまたま体調が悪かったのか、食べ終わった直後に急激に波が来たというだけのこと。些細なことで喧嘩をしてしまったカップルみたいなもの。私は今でも彼を愛している。タンタンなしでも同じことは起こりうる。いつだって起こりうるのだ。朝の通勤電車でだって同じ状況になったことは何度もある。私は何度だって耐えてきた。新橋の電車内から東京駅のヤエチカの出口付近のトイレまでだって耐えたことがあるんだ。
だから私の魂の強度はイスカンダルほどではないにしろ、そこそこ強い方だと思う。
持ち前の忍耐力で自宅まであと30mくらいのところまで来た。
ここからの30mの長さと来たらない。
一歩、また一歩を大事に、なるべく力まずになるべく軽やかに、静かに、素早く。
この歴戦のテクニックよ。
もしも私がそこらの有象無象くらいの魂の強度しかなかったとしたら、この30mは耐えられなかっただろう。
だが、耐えた。
自宅に到着したらどういう順序で何をするのかはもう頭の中で完全にシミュレートできている。
鍵を開け、玄関の扉を開け、靴を脱ぎ、トイレの扉を開け、ズボンとパンツを同時に下ろして、便器に座りながら、もうその最中にでも放出すれば良いだろう。
完璧だ。
そして玄関前。というよりエデンの前。私は勝ったのだ。完全に限界だが、ちょうど間に合う。本当にちょうど間に合った。
これはもうズボンを下ろしたと同時にカップインする。そういうペースであった。
私は震える手でポッケから鍵を取り出し、鍵を差し込み、回転させ、そう扉を開けて…「ガシャ」って…えっ!?
なん…だと…!?
開かない…閉まっているだと?
いや、おかしい。
今まさに私は鍵を開けたのだ。だが鍵は閉まっているのだ。
何を言っているのかわからないと思うが、私にも何が起きたのかわからなかった。
脳が震える…
しかしもう考えている猶予はない。とにかくもう一度同じ動作をリピートして玄関の鍵を開けて、靴を脱いで、トイレに駆け込んだ。
2つくらい前の動作で既に臨界点。
トイレの扉を開けた直後に私の方の扉、いや門が開いた。
※画像はイメージです
ズボンを下ろす動作だけは、間に合わなかった。
逆に言えば、それ以外はほとんど間に合っていた。
2つだけ、届かなかったこと。ズボンを下ろすことと、便座のフタをあげること。
0-2 サヨナラ負け。
…言い訳はすまい…私は敗北したのだ。
私には人並みの魂はなかったのだ。ひどく脆く、弱い……脆弱…!
弱いことは時として罪であり、これは罰である。
予想通り、もちろん出力は固くはなかった。
そりゃもうゆるゆるでしたよ。
こんなに汚いヨーグルトはこの世界に存在しないだろうね。しかもかろうじて固形を保っているヨーグルトの方ではなく、完全に飲むヨーグルトの方だわこれ。それにしてもすごい質量だ。過去最大級かもしれない。小さなバケツ一杯くらいはあるか?
ちょうどズボンを下ろしている最中に開門したもんだから、太もも、他、開かれていない便器の蓋の上とか、トイレマットとか、ありとあらゆるところに惨めな私の分身が飛び散っていた。
私は汚れたズボンとパンツと靴下を脱ぎ、しばらくトイレにこもりながら呆然としていた。
臭かった。
そのあと、泣きながら掃除を始めた。
リビングに父がいた。
「○○(私の名前)!お前、糞漏らしたのか!?」
私の父は、日中の在宅中には、玄関に鍵をかけない。
2Fの私の部屋の前のトイレは、普段は私だけが使用する。そのトイレの便座のフタは常時上がっている。
1Fの玄関前のトイレは、普段は父だけが使用する。そのトイレの便座は、基本、フタがされている、ということをこの日私は久しぶりに思い出した。
もちろん父は何も悪くない…ただ、その土曜、家に居ただけだ
トイレだっていつも通りの形でそこにあっただけ
タンタンもいつも通り美味しかった
この日私は己の弱さを知った